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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第1章 人知れず咲く花

「そなたを見ていると、あの者を思い出すな。どこまでも律儀で、正直者を絵で描いたような人間だった」
 確か柳尚宮は三十八であった張尚宮よりは数歳年長のはずだ。影の薄い、ひっそりとした雰囲気の張尚宮と、一度見たら忘れられない強烈な印象を残す柳尚宮は外見も中身もおよそ対照的であった。
「そなたは、考えたこともなかったか? 張尚宮が何ゆえ、殿下(チユサン)付きの尚宮になったか」

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