ただ愛されたかった。
第5章 第5章---"嘘"---
大きな公園だ。
バカでかい池もある。
ここまで大きい公園なら
近くで隠れているのは簡単だった。
達也が夏希に近づいて
髪を撫でている。
(なにしてんの...?)
私は心臓の音が体に伝わる位
ドキドキしていた。
「ふざけんなっ!!」
達也の顔をビンタしていた。
夏希はグスグスと泣きながら
なにか話している。
木の繁る音で聞こえなかった。
達也は夏希を抱き締め
ふたりの顔が重なっていた。
すぐにその場を去った。
走って走って走りまくった。
頭の中でまだあの映像が
映し出されている。
家に着くのと同時に達也から
着信があった。
(達也...)
「はい」
電話越しに、車で走る風の音がした。
「いま家戻ってるから」
一瞬で肩の力が一気に抜けた。
深い溜め息が出た。
どこかで不安に感じている。
---あの時、なにしてたの?
---なんで抱き締めてたの?
自分が狂いそうだった。
ガチャンとドアの音がして
達也がいた。
「あ、大丈夫だった?電話」
「あー大丈夫。
ちょっと友達と喧嘩して」
夏希と?
と聞きたかったが
喉で止まってしまった。
私は知らないフリ。
達也もわかるはずない。
達也は私の後ろに座って
私を寄り掛からせた。
「莉奈、俺莉奈のこと
まじで好きだから。
信じてな。」
私はなにか突っ掛かったが
顔は見ずにコクンと頷いた。
達也と倒れ
深いキスをし
身体を重ね
互いを感じる。
「達也...」
微妙に震える声で
名前を呼んだ。
真っ暗闇の中、
私の目に涙が溜まっていた事、
達也は知らなかった。
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