私立愛鷹学園高等部
第11章 *中庭ランチから*
翔には両親がいない。
父親は、妊娠がわかった途端逃げ、
母親は、翔の出産時に他界した。
とある金持ちの家に入るも
名字は母の名前『落合』のままに。
『翔』って名前は
母親が死ぬ寸前に命名した。
母親は必死に話したから、
看護師の聞き間違いがあるかもしれない。
『それでも、その名前と名字を残したのは、少しでも繋ぎ止めたかったんだ』
って翔は言ってた。
父親の行方はわからず会ったことが
なければ顔も知らない。
親戚も誰がいるのか知らないから
血の繋がった人を誰一人として知らない事になるのかな。
翔に家族はいなかったんだ。
そんなに悲しいことってあるか?
「夾、また黙ってる。考え事か?」
「んぁ?まぁ、な。」