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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第4章 二つめの物語~梨羅の姫君~

 桃華の生まれ育った羅の夏は、かなり蒸し暑くなる。気温も一年を通じて高めで、冬の寒さが厳しい超に比べて、温暖な気候だ。その点、羅は暮らしやすい国だった。
 今、桃華は侍女も連れず、一人で庭を散策していた。数日前、突然桃華の寝所を訪れてからというもの、良人である皇帝は桃華の許に来ることがふっつりと絶えた。昼間に来ることもなく、どうも意識的に避けられているようでもあった。やはり、閨でのやり取りが皇帝の気に障ったに相違ない。

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