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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第4章 二つめの物語~梨羅の姫君~

「陛下」
 そっと背中越しに声をかけると、泉のほとりに佇んでいた皇帝がつと振り向いた。皇帝の秀麗な貌(かお)にかすかな愕きの表情がよぎる。やはり、自分はこのひとに疎まれているのだと、桃華は改めて思った。
「何ゆえ、私をお避けになられますの?」
 桃華は訊ずにはおれなかった。皇帝李彩鳳はその問いには応えず、視線を泉に向けた。短い沈黙が二人の間に重たく横たわる。

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