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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第4章 二つめの物語~梨羅の姫君~

 ふいに涼しい風が二人の傍らを吹き抜け、泉の面が漣(さざなみ)立った。彩鳳は陽光を受けてきらめく水面を眼を細めて見つめていた。
「朕は臆病な男なのだよ」
 突如として彩鳳が沈黙を破った。
「前の皇后が何故、亡くなったかを知っているか?」
 問われ、桃華は小さく頷いた。この国へ嫁ぐことが決まった時、彩鳳の前妻のことも、彼女が流産後に亡くなったことも聞かされている。

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