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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第6章 三つめの物語~砂漠の鷹~

 その後、あの夫婦がどうなったのかは判らない。遭遇する者はすべて情け容赦もなく殺すはずの砂漠の鷹が何故か、あの夫婦者にとどめをさすことはなかった。十年前のあの悪夢の日、修明たちは若い夫婦をオアシスのほとりに置き去りにして去ったが、修明は出立の間際、良人の縛めを解いてやった。その行為は、非道を謳われた「砂漠の鷹」の中に唯一存在していた良心のかけらから発したものだったかもしれない。

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