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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第2章 初めの物語~砂漠の花―ミイラが語る愛―~

 が、二十歳を幾つか越えたと思われる年頃の良人の顔に一瞬、翳(かげ)がよぎった。彼は偶然に一夜をこの水場で共に過ごすことになった仲間をあまり歓迎していないように見えた。
 ほどなく、駱駝のいななきや声高な男たちの話し声と共に、数人のキャラバン・サライが出現した。隊商(キャラバン)の規模としてはけして大きいものではないが、それでも十代後半から二十歳ほどの屈強そうな若い男たちが数人はいた。何かの品を商う商人らしく、大小様々な荷を各々の駱駝の背にくくりつけている。

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