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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第2章 初めの物語~砂漠の花―ミイラが語る愛―~

 一晩中、炎を絶やさぬのはまた、砂漠で野宿をするときの常識でもあった。火は単に暖を取るためだけではなく、徘徊する得体の知れぬ獣を近づけぬためのものでもある。
 良人は大きな袋から取り出した獣の肉を干したものを炎で焙っていたかと思うと、傍らの妻に渡した。かと思えば、再び袋からパン(小麦粉を練ってのばして、薄く平らな形にして乾燥させたもの)を出して火で焼いている。その合間には妻に水を呑ませたりと傍目で見ていても、実に甲斐甲斐しく世話を焼いていた。

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