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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第1章 第一話 砂漠の花

 ホウとひと息ついたその時、ハッと眼を見開いた。あっと小さな悲鳴を上げるまもないほどのわずかな間に、少女の細いうなじから下げられていた雫型のペンダントが川に落ちた。
 乙女の流す清らかな涙をかたどったペンダントは母から譲り受けた大切な宝物だ。父が母に買ってくれた唯一の想い出の品だという。透明な涙型の石はキラキラと眩しく光り輝きながら、見る間に水面下へと消えて見えなくなった。

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