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仙境綴~美しき仙界の王と身を捧げる少女~

第4章 二つめの物語~梨羅の姫君~

 女官の台詞を今また思い出しながら、桃華はともすれば震えそうになる身体を両手でギュッと抱きしめる。皇帝の私邸でもある後宮の中でも最奧部にあるこの寝室は、真夜中でもあるせいか、物音一つ聞こえない。その静寂が余計に桃華の恐怖を増す。
 やがて、部屋の両開きの扉がギイーと軋んだ音を立てて開いた。桃華はその音にピクリと小さな身体を震わせた。桃華は蹲踞(そんきょ)の姿勢で、床にひざまずいて良人たる皇帝を迎え入れる。

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