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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶



智己の胸の中で電車に揺られながら
“――水族館前”というアナウンスが流れるのを聞く



私達は人の波にのまれながらもその駅で降りて水族館へと向かった






家族連れやカップルのお客さんが多くて水槽の中もしっかり見ることができるほどの余裕はなかったけど

智己が楽しそうにしてるのを見て私も嬉しかったし
何より、一緒に居られるだけで楽しかった






一緒にイルカのショーも見た
前の方に座ったおかげで
水しぶきで濡れながらも楽しい時間を過ごしていた




それからヒトデや浅瀬の生き物達に触る体験ができるというコーナーへ向かおうとしていた





「え゛?唯触りたいの?」





智己はそういいながら私をぎょっとしたような表情で見下ろす





「え?触りたくないの??」





あんなに水槽の中の魚をみて楽しそうにしてたのに、いきなりどうしたんだろうと思う





「い、いや・・・
触りたくないというか・・」





なんだか明らかに焦っている





(もしかして・・)








「智己、魚とか触れないの??」







私がそう聞くと






「・・・」





図星だ
きっと触れないんだ



そう思ったら普段は智己はそんな風に見えないから意外で笑えてしまう




「ふふふっ」









「な、なんだよっ」






焦っている様子の智己






「触れないんだー、怖いの??」






その智己にからかうように言うと






「触れるから!行くよ!」






そう言って私の手を強引に引っ張って体験コーナーへと向かった






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