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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶




「ヒトデが触りたいの?」




優しく女の子に問いかける智己





「うん・・」




智己の方を見て女の子が答える





智己は女の子に微笑みかけ


「お兄ちゃんと一緒に触れば怖くないよ?」


そう言った







(え?触れないんじゃないの?)







さっきまであんなに動揺してたのに


今は全くそんな素振りが見えない






智己はすこしためらったようにも見えたが水槽の中に手を入れる





手前にいるヒトデを手に乗せ


「ほら、怖くないよ?」


そう言って女の子の前に
手を差し出す





女の子は恐る恐る手を伸ばし




小さな一指し指で
ヒトデの足にちょんっと触れた






今まで困った顔をしていた女の子の顔がぱあっと明るくなる






「触れたよ!」






キラキラした笑顔で智己の方を見た







「すごいね、よくやった」



智己は笑顔でもう片方の手で
女の子のサラサラした髪をくしゃっと撫でる







嬉しそうに智己に頭を撫でられている女の子





微笑ましい光景に私も顔がほころんだ






「ありがとうお兄ちゃん!」





そう言って笑顔で近くに居た
赤ちゃんを抱いた若そうな夫婦の元へと向かった

きっとこの女の子のお父さんとお母さんなんだろう





女の子は二人に笑顔で私達を指差しながら何かを言っている





女の子の両親は
私と智己に向かって優しい笑顔で軽く頭を下げた





こちらも二人に頭を下げる







「ばいばいお兄ちゃんお姉ちゃん!」



女の子が手を振りながら言う




「ばいばい!」




私達も手を振って女の子の姿を見送った



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