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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶





「ヒトデが触りたいの?」




問いかける俺の方を向いて
こくんと頷き答えた






「じゃあ、お兄ちゃんと触れば怖くないよ?」




俺には弟しかいないから
きっと妹がいたらこんな感じなんだろうなと思いながら言った






動揺するのを抑えながら
水槽に手を入れヒトデをそっと
手の上に乗せた


そのまま女の子の前に差し出す






女の子は手を恐る恐る伸ばし
ヒトデの足に少しだけ触った





女の子はたちまち笑顔になり
花が咲いたように笑って俺を見た





「触れたよ!」






その女の子のあまりの可愛さに
濡れていない方の手で
女の子の小さな頭を撫でた






「ありがとうおにいちゃん!」






そう言ってその子の両親と思われる若い夫婦のもとへ向かった


俺達の方を指差しながら
何がを言っている


それからその両親は
こちらへ向かって笑顔で頭を下げた

俺達もそれにこたえるように
頭を下げた





「ばいばいおにいちゃんおねえちゃん!」




女の子が手を振るのに答えて



俺達も手を振ってその子を見送った






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