テキストサイズ

やっと、やっと…

第10章 甘い記憶


―――――――――――――



食事を終えて、
私達は堤防に座って話していた





暑かった昼間とは変わって
爽やかな潮風が頬を撫でる



なんだか肌寒く感じ
少し身震いした







すると、


「寒いだろ?」






智己がそう言って
私の肩に自分の着ていたシャツを羽織らせてくれた




「・・智己は寒くないの??」





そう私が聞くと




「俺は平気だよ」




そう笑顔で答えてくれた





ふと、智己の方を見ると
タンクトップ一枚で寒そうに見えた



だけどそれよりも
野球で鍛えられた腕のたくましさや力強さに思わず息をのんだ



分厚くて広い胸にいつも抱きしめられているんだと思うと
自然と顔が熱くなる




私がしばらく何も言えずに見つめていると







「なに?どうした?」





智己がこちらを向いて
笑顔をむけた






「あ、いや・・・

なんでもないよ・・」





恥ずかしくて目を閉じながら顔を下に向け答えた






「どーしたの?」






そう聞く智己の声がすぐ近くで聞こえ目を開く





目の前に智己の顔が迫って
余計に胸が騒ぐ




さっきまで寒かったのに
顔が焼けるように熱い




智己は何も言わず
私の顔にそっと触れた

大きくて熱い手が
私の頬を包み込む



恥ずかしくて、
だけど心地よくて落ち着く




そのまま顔を上に向けさせられ

熱っぽい瞳で私を見つめる智己の顔が、さっきよりも近づく・・・








(―あ・・・)






状況を把握するよりも早く



智己は私に
触れるだけの優しいキスをした・・











ストーリーメニュー

TOPTOPへ