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やっと、やっと…

第10章 甘い記憶





角度を変え
啄むように何度も口付ける



その度にお互いの吐息が漏れる




不意に開いた口から
智己の舌が入ってくる



歯列をなぞり
私の中を貪るように深く長く・・





「・・・っんふぁ・・」




智己の唇が離れると
声が漏れた




波の音にかき消され
それは周りには聞こえない





(こんなところで・・

誰か見てるかもしれないのに・・)




そう思ったが
離れたくない思いが勝り
私は抵抗しなかった






しばらくして智己が私から離れる







「―――っあ・・」






まだ離れたくなくて
少し残念な気持ちになってしまう






「どーしたの・・?」




分かりやすく首を傾げ
からかうように笑いながら私を見る




「もっとしたかった?」




(―――っ!)




意地悪くそんなことを聞いてくる







「そういうわけじゃ、
ないけど・・」






智己は優しく笑うと
私の頭をくしゃっと撫でる






「誰かに見られちゃうよ?」







「・・っそんなこと、
わかってるよ!」





照れながら慌てる私に
智己はさっきよりも笑う




私が恥ずかしくて
何も言えないでいると






「俺が我慢できなくなる・・」







智己はもう一度顔を近づけ
唇が触れそうな距離で
囁くように言った








(―――っ!!)






掠れた甘い声にドキドキした


顔が熱くなった






智己はちゅっと軽くキスをして離れると
私の頭をくしゃっと撫で


「もうそろそろ帰るか」



そう言って私の手を取り立ち上がった




「あ、うん…」




まだ胸がドキドキして
頬の熱が冷めない



私は動揺しながらも立ち上がり
手を繋いで歩き始めた







潮風が私の熱を冷ますように
やさしく吹き抜けていった











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