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やっと、やっと…

第11章 人の夢は儚くて




そのキスは

私にはすごく長く感じられた




(いやだ、怖い…、助けて)




声にならない訴えは
誰にも聞こえるはずがなくて…





「・・とも、き・・・・」




私は大好きな人の名前を呼んだ





(助けて、助けに来て…)





そんな呼びかけは
圭介を逆上させた





圭介が唇を離し

呆然とした目で見つめる








冷たい目が私を貫く








「・・・そうやって」









「そうやって
唯があいつの名前を呼ぶ度に、

俺はどうしようもなくなる


なんであいつなんだよ


なあ、唯」









声は低く、熱をもっていた


心の底に何か潜んでいるように








私はそれに圧倒されて

ただ小刻みに首を振ることしか
出来なかった












「あいつが居なければな・・・」












(―――っ)








血の気が引いた







この人の怒りの矛先は

智己に向いている








それだけはだめだ






巻き込むわけにはいかない











「・・・ちがう」






私は声を振り絞り
首を振った









「・・・智己のせいじゃない」










圭介がその言葉に反応し

髪を撫でる









「じゃあ、唯が

あいつに言い寄ったの?」








「俺が居るのに?」










きっとこのまま頷けば


何をされるか分からない









だけど・・・




だけどここで首を横に振れば






この人は

智己に何をするか分からない








緊張で吐き出してしまいそうだった

息が詰まり

何も考えられなくなった







だけど





(巻き込めないよ・・・)







そう思ったら
自然と







首が動いた








私は首を

縦に振った







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