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やっと、やっと…

第11章 人の夢は儚くて



それから私は公園に向かった



ベンチに座って智己を待ちながら気持ちを落ち着かせる





(なんて言えばいいんだろう、

勉強が忙しいから?
好きな人が出来たから?


それとも、
嫌いになったから?)




どれも当てはまるはずがないけどなんとか誤魔化さなければ



(本当は別れたくない

大好きだから
ずっと一緒に居たい


だけど、智己のためだから)








考えれば考えるほど
気持ちは落ち込んでいく一方だった




俯いて考え込んでいると






「・・・唯?」





頭上から
智己の声がした






「あ・・」






ふと目線を上げると
いつものように微笑む智己の姿があった







「あ、ってなんだよ」





そう言って私の頭をくしゃっと撫でる





(智己・・・)




不意に涙が溢れそうになって
すぐに顔を下に向けた





「どうした?」





そういいながら智己が隣に座る





私は何も言えなくなって
ずっと下を向いたまま黙っていた





いざ智己を目の前にしたら頭が真っ白になって、今すぐにすがりつきたい気持ちになった




智己が何度か私の名前を呼んだけど、私は答えられなかった






智己もいつもと違う雰囲気に気づいたのか



「何かあった?」




そう智己が心配そうに私に尋ねた






(言わなきゃ、

別れるって、言わなきゃ・・)







「あのね・・・」







「ん?」






笑わないで








「あの・・」










「どうした?」















そんな風に
いつもみたいに


笑顔を見せないで














「・・・・」












「唯?」












そんな優しい顔で

私の名前を呼ばないで





























「智己・・・












別れよ」










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