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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 恐らく、あのような不幸に見舞われなければ、一人で深夜、町を徘徊するようなこともなかったろう。そんな女にとってみれば、現ならぬ世界にさ迷いこんでいた時期に、ゆきずりで一夜を共にした清七なぞ本当にただ忘れたいだけの男だとしても何の不思議もない。
 いや、むしろ、清七の顔を見る度に、忌まわしくも汚辱に満ちた記憶が甦り、いっそのこと清七と共に過ごしたあの一夜だけではなく、清七という男そのものすら消してしまいたいと思っているだろう。

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