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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 それも触れなば落ちんといった、人眼に立つ色気ではなくて、可憐な面立ちであるにも拘わらず、どこか妖しい魔力のような、そこはかとなき色香を秘めている。美しき花に潜む毒に惹かれてくる蝶のごとく、あまたの男がその未亡人の魅力の虜になるとさえ、いわれていた。
 とにもかくにも、その評判の美人内儀が前の亭主を病で失って以来二年、ついに二度目の聟を迎えるというので、そのことは何と瓦版にまで載るほど世間を賑わすことになった。

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