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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 勢いよく煙管を煙草盆にポンと打ち付け、立ち上がる。
「ちょっと、厠にでも行ってくるわ」
 長屋では共同で使う厠と井戸がある。むろん、風呂などがあるはずもなく、湯を使うとは銭湯にゆくのだ。
 食後の一服の後、厠に行くのも、これまたいつものことゆえ、お民は振り返りもせずに頷いた。
「ああ、お前さん。その後で良いから、源さんのところに鰻を持っていってあげておくれよ」

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