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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 〝源さん〟というのは、斜向かいに住む左官源治である。二十五になってもいまだに独り身で、お民の毒舌の犠牲になっているという点では、兵助と同様だ。長身で、女ながらも〝天を衝く大女〟と揶揄それることのあるお民よりも更に幾分かは上背がある。顔立ちも整っているし、それなりの男前ではあるのだが、どういうわけか女っ気は全くない。
 いや、あまりにもそういったことに疎いので、実は想いを寄せられていても、当人は全く気付いていないということもあるらしい。

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