テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 ただならぬ声に、すぐに斜向かいの家の戸が開いた。
「どうしたんだい」
 源治は道に仰向けになって伸びた兵助をひとめ見るなり、血相を変えた。
「こいつは、いけねえ。お民さん、何をぼうっと突っ立ってるんだ? 早く玄庵先生を呼んできな」
 いつもの大人しい源治とは別人のような切羽詰まった様子で、源治が怒鳴った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ