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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

「ねえ、どうして? どうして、こんなことになっちまったの? 仏さまは本当にこの世にいなさるのかい? もし仏さまがいなさるなら、何であたしら夫婦にばかり、こんなことが続くのさ。仏さまは六年前に兵太をお連れになったばかりじゃ気が済まなくて、また、あたしから亭主まで取り上げなさろうとしなさるのかい」
 お民は厭々をしながら、まるで駄々をこねる幼児のように泣きじゃくった。

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