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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

「お民さん。気持ちは判るが、しっかりしな。こんなときこそ、お前がしっかりして気を確かに持たねえといけないだろう」
 源治の大きな手が躊躇いがちに伸びてきて、そっと肩に乗る。触れられた箇所に、確かに人の温もりを感じ、お民は涙に濡れた眼で源治を見た。その温もりが今は心底嬉しい。
 真摯な眼だった。
 存外に整った貌が気遣わしげにこちらを見ていた。

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