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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第6章 恋紫陽花 弐

其の弐

 玄庵はその夜が山だと言ったけれど、結局、朝方には兵助は持ち直していた。ただ、それは病が癒えたというのではなく、一時的に小康状態を保っているだけのことだ。危険な状態は依然として続いていた。
 お民は処方された薬を日に三度、根気良く呑まし続け、汗をかいた身体を丁寧に拭いてやった。甲斐甲斐しく看護を続ける傍ら、夜は夜で長屋の住人たちが寝静まっている時刻、井戸端で水ごりを始めた。

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