テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第5章 恋花二つ目~恋紫陽花~壱

 そういえば、源治の顔なんて、これまで飽きるほどに何度も眼にしているはずなのに、間近で見たのは今日が初めてのような気がする。
「今は、お前のできることをする、それしかないじゃねのか。玄庵先生も手を尽くすとおっしゃってるんだ、とにかく良い方向に向かうように祈ろう」
「うん、そうだね」
 お民はいつになく素直に頷く。
 源治の手がいつのまにか離れていることにも気付かなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ