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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第6章 恋紫陽花 弐

 しかし、当のお民は遠くから自分を見ている男がいるなぞとは想像もしていない。ただ無心に、ひたすら水ごりを続ける。
 良人の回復を祈りながら水ごりを続ける女を、そのような欲にまみれた眼で見る自分。そんな自分に嫌悪感を感じ、源治はふっと眼を背けた。だが。
 本当のところはどうなのか。お民の豊満な身体から眼を離せない自分がいやだというよりも、自分ではない男―亭主のために一心に祈りを捧げる女を見るのがいやだったのかもしれない。

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