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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 その朝、お民はここ数日来の看病疲れがたたって、朝方、浅い眠りにたゆたった。良人の枕辺に打ち伏して、うたた寝していたお民がハッと目覚めた時、既に兵助は呼吸をしていなかった。本当に眠るように静かな最期であった。その表情からは、苦悶も一切感じられず、急きょ呼ばれてやってきた狩納玄庵もまた、〝殆ど苦しまずに逝ったはずじゃ〟と同様のことを言った。

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