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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 野辺送りも無事に済んだ夜のことである。
 お民は惚けたように家の片隅で座り込んでいた。兵助の葬儀を終えるまでは、それでも何とか自分を保っていられたものの、いざ終わってみると、まるで身体から魂がさまよい出てしまったような、そんな頼りない心地だった。
 空しい。とにかく、何をしたいとも思わないし、生きていること事態が億劫に思えた。

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