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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 お民はもうかれこれ一刻半以上、こうやってこの場所に座り続けているのであった。
 ふいに、背後で表の戸が控えめに開く音がした。次いで、戸が閉まる音。
 だが、お民は振り向きもせず、その場に惚けたように座している。物言わぬ位牌となり果てた亭主の前で、茫然と座るお民。そのお民の後ろ姿は、いつもよりひと回り以上も小さく見える。

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