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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 家族と共に賑やかに暮らすことが当たり前のように思っていた時分は、こんな日が来ようとは想像だにしなかった。ひっそりと静まり返った家の内を思い、清七は暗澹とした気分に陥った。
 そして、春の宵にたとえ一刻でも酔いしれようとしていた自分に嫌悪感を感じ、妻子に対して申し訳ない気持ちで一杯になった。あたかも自分が亡くした女房や子どものことを忘れ果てた薄情な男のように思えてくる。

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