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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 和泉橋町―つまり、和泉橋の上手にひろがる武家屋敷町の一角に、さる旗本の屋敷がある。当主は直参旗本で五百石を賜る石澤嘉門、歳は三十六だという。その石澤嘉門が妾を探しているとのことで、誰か適当な女がおらぬかと口入れ屋に訊ねてきたとのことであった。
―あんたは歳の頃も丁度、石澤の旦那さまと釣り合うし、おまけに聞けば、子どもを一人産んでいるというから、うってつけだと思ってねえ。

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