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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 川のほとりには、垂れ桜が一本、ひっそりと植わっている。水無月の今は花はなく、眩しい緑の葉が眼にも鮮やかだ。葉桜となった樹の下に、紫陽花が数本群れ固まって咲いている。淡い蒼色はまだそれほど色づいてはいなかったが、灰色に塗り込められた風景の中では、そこだけが際立って見えた。
 この川は見かけは底も浅く、流れも緩やかに見えるが、実は急に深くなったところも多く、流れも速い。

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