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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 この川が兵太の生命を奪った。
 じいっと川面を覗き込んでいたら、そこに愛盛りの我が子の面影が浮かんできそうだ。
―兵太、おっかちゃんはもう疲れちまったよ。
 別に川に身を投げようなぞと考えわけではない。
 だが、このときのお民が口入れ屋の放った数々の言葉に、深く傷ついていたことも確かであった。
 暗澹とした想いで川面を見つめていると、我知らず涙が滲んできた。

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