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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

―お前さん。どうして、あたしを置いて逝っちまったんだよ?
 兵助の、兵太のおらぬこの世は、あまりにも淋しい。淋しすぎる。
「おい、お民さんじゃねえか?」
 突如として声をかけられ、お民は慌てて顔を上げた。
 見慣れた顔―源治が橋の上からお民を見つめていた。
 視線と視線が絡む。
 お民の眼に浮かぶ涙を見て、源治はハッと胸を衝かれたようだった。

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