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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 源治にそこまで嫌われてしまったと考えただけで、心の内を薄ら寒い風が吹き抜けてゆくような気がするのは何故なのか。
 お民は自分で自分の心の在りようが判らない。梅雨時のせいか、今日は昼間もさほど気温が上がらず、夜になって風はいっそう冷たくなった。
 殊に川を渡る夜風はひんやりとしている。今は葉桜となった垂れ桜の下群れ咲く紫陽花は、いまだ淡い蒼色をとどめたままだ。
 紫陽花は人の心。

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