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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 だが、兵助が倒れてから何度も感じたように、お民だって所詮はか弱い女なのだ。
 この広い江戸で亭主を失った女が一人、生きてゆくには確かに口入れ屋の言うとおり、誰か―確かな財力を持つ男の庇護を受けるのがてっとり早い道ではある。それは即ち、ちゃんとした女中奉公などではなく、その男の慰みものになり、身体を委ねるということに他ならない。

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