テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 どこかでチリリンと風鈴の音がかすかに鳴った。澄んだ音色がやけに物哀しく響いてくるのは、やはり気持ちのせいだろうか。
 お民は淡く微笑すると、小さくかぶりを振る。夜が更けるにつれて、風はいっそう冷たさを増してきた。
 そろそろ家に戻ろうと思った、まさにその時。
「こんなところにいたのか」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ