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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 お民は、半ば自棄のようにからからと笑った。だが、笑っている本人がその声の不自然さや、あまりに空々しいことに気付かない。
「それとも、まさか妾奉公に出るとでも?」
 続いて源治の口から紡ぎ出された言葉は、更に意表を突くものだった。
 お民は茫然として、眼の前の男の顔を見つめた。
―源さんって、こんなに男前だったっけ。
 と、実に場違いなことを考えながら。

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