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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第7章 恋紫陽花 参

 お民にとって、源治はいつも〝斜向かいの大人しくて、放っておけない弟分〟だった。
 弟はあくまでも弟であって、その顔立ちが男前かどうかなんて気にしたこともなかったし、また気にする必要もなかったのだ。
 それが、いつからこんな妙なことになってしまったのか。やはり、兵助が亡くなってしまったことで、自分は少し気弱になってしまっているのか。
 眉月が源治の顔を淡い闇に浮かび上がらせている。月明かりに照らし出された男の顔は、愕くほど整っていた。

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