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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

     《其の壱》

 人々の喧騒でかしましい大通りを一人、黙々と歩きながら弥助は我知らず、小さな吐息を零していた。不思議なもので、師走の声を聞いた途端、江戸の町は何とも慌ただしい雰囲気に呑み込まれる。
 ほどなく迎えるべき新しい年の暦を売り歩く暦売りの声がいかにも忙しなさそうに町中を行き交い、道ゆく人は何かに追い立てられるような気分で家路を急ぐ。

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