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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 これは大家の徳平の名から由来したもので、徳平は温厚な六十過ぎの老人であった。昔は生糸問屋の主人として相当のやり手の商人であったらしいが、五十で倅に身代を譲ってからは、気随気儘な隠居生活を送っており、徳平店の他にも幾つか似たような長屋を持って、その店賃を小遣い代わりにしているようだ。

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