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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第8章 三つめの恋花  桜いかだ 其の壱 

 多くを望まず、今、眼の前にあるささやかな幸せだけを見つめることこそが大切なのだ。別に誰から教えられたわけでもなかったけれど、弥助はいつしかそんな風に考えるようになっていた。よもや、そのような彼の堅実な人生観を根底から覆すような出逢いが彼の人生にまだ用意されていたとは、弥助は考えだにしなかったのだ。

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