テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 それでも健気に泣き言一つ洩らさず、くるくると店に出て働いているお順は、人の心を打った。〝いっぷく〟に帰ってきて半年後、お順の幼なじみの寛(かん)助(すけ)とかいう若い大工がそんなお順に恋心を打ち明け、お順は今年の二月、梅の花が咲く頃に再び嫁いでいった。
 清七にしても、お順には幸せになって貰いたいとは思うけれど、そのために喜平が自分の再婚にまで要らぬお節介をしてくるとなれば、話は別だ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ