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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第1章 恋花(こいばな)一つ目~春の夢~壱

 清七は女の身体を軽々と抱き上げる。
 女の身体はまるで羽根か何かのように怖ろしく軽い。その頼りない軽さこそが、この女の存在そのものを現(うつつ)のものではないように思わせ、清七は女の身体に回した手に力を込める。
 やわらかな身体が砕けんばかりにかき抱(いだ)くと、女は苦悶とも歓びともつかぬ呻き声を上げ、わずかに身体をねじった。そんな仕草さえ清七の中に灯った焔を煽る。
 清七は女を抱え上げ、橋のたもと―川原に運んだ。

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