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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 弥助は、いっぱしの口をきく娘の横顔を淋しさ半分、嬉しさ半分の複雑な気持ちで眺めていた。
 十二月も半ばを過ぎたある日、弥助は一人、随明寺に詣でた。随明寺は町人町から和泉橋を渡り、更に和泉橋町を抜けた外れに位置する。
 京の宇治に万福寺を開いた高僧隠元隆琦の高弟の一人、浄徳大和尚が開祖で、黄檗宗の名刹として江戸っ子たちからも親しまれている。

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