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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 自分がおれんに惚れていることは確かだが、現実として、彼女と所帯を持つことはまだ考えられない。第一、弥助はまだ、おれんの気持ちすら、確認してはいないのだ。相手の心も判らないのに、悶々と思い悩む自分がとんでもない愚か者に思える。
 もしかしたら、おれんは自分のことなぞ何とも思ってはおらず、この想いは弥助一人の片想いなのかもしれないのに。
 我ながら、何とも情けない有り様だ。これでは三十三どころか、恋を知り初(そ)めたばかりの子どもではないか!

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