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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 忘れようと思うほどに、あのふわりとした、花のような微笑が眼裏から消えない。まだ二度しか逢ってはおらぬ女のどこに、そこまで心を奪われたのか。弥助自身にも判らない。ただ無性におれんに逢いたかった。
 おれんの顔を見たければ、〝花のれん〟に行けば良いだけのことだと頭では判ってはいても、行けば、そのままもう二度と取り返しのつかぬ道に踏み込むことになってしまうような気がしてならない。

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