テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第9章 花いかだ 其の弐

 弥助は誇らしげに胸を心もち張って応えた。
「おれんっていうんだ」
「そう、良い名前ね。素敵な名前―、名前のように、蓮の花のように綺麗な女(ひと)?」
「うーん、そうだなァ。蓮の花っていうよりは、白木蓮かもしれねえ」
 早春、白い大きな花を咲かせる白木蓮はそれこそ天から降る散華のような花びらを幾枚も重ね合わせた気高く、清楚な花である。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ